海外の文献を読んでいると、辞書に載っていないような単語にぶつかることがあり、まあ、ニュアンスで判断できることが多いのですが、一瞬、悩んだのが下記の文章。
Depped for Jabbo Smith on James P. Johnson recordings in June 1928.
Who’s Who of Jazz by John Chilton
これ、Cootie Williamsに関する記述なのですが、1928年6月のJames P. Johnsonの録音の話なので、実際のレコードを見てみると、ここにはJabbo Smithは参加しておらず、おそらく「代役として」という意味なのだろうな……と想像しました。
結局、”deputise(代役を務める)”を省略した”dep”を過去形にした際に、どう発音するかの目安にする為に”p”を重ね、”depped”となったようです。前後の繋がりと前提知識があった為、正解を導き出せていたわけですが、この用例は、なかなか難易度が高い。(日本のジャズ界でも代役の事を「トラを務める」と表現したりもしますから、そういう類のスラングでしょうか?)
さてさて。James P. Johnsonの下で、Jabbo Smithが演奏していた録音がどんなものだったかも気になったので、ちょっと調べてみたら、下記のようなメンバーでの録音が出てきました。
- Jabbo Smith (cnt)
- Garvin Bushell (cl,as,bassoon)
- James P. Johnson (p)
- Fats Waller (org)
James P. Johnsonのピアノ伴奏の上で、Fats Wallerがオルガンで旋律を弾くパートもあり、なんともユニークな編成。何かの書籍でこの録音の存在を目にしたことはあった気はするのですが、音源そのものをしっかりと聴いたことはなかった気がします。
”Depped for Jabbo Smith”という謎の表現にぶつかっていなかったら、聴く機会がなかったかもしれない……と思うと、なかなかの縁ですね。