ジャズ史や音楽家の経歴を調べて、これを百科事典サイトにまとめる活動をしているわけですが、この過程では様々な書籍を参照しています。できるだけ一次情報に近い資料にあたろうという方針を立てたのは最近のことです。

洋書を読んでいることもありますが、邦訳されたジャズ書籍にも質の高いものがあり、「邦訳されたジャズ専門書籍」→「元の洋書の該当の章」→「その証跡としての原典」という形で辿っていくことも多いのですね。その過程で各種ディスコグラフィーとの照合をすることで矛盾を見つけた場合は、他の書籍でどう書かれているかを探す……というようなことをしています。

カンザスシティにおける1920年代のジャズ史の面白さに気づいたので、『カンザス・シティ・ジャズ(ロス・ラッセル著)』を読んでいたのですが、気になる記述を見つけるたびに原著の方も引いています。で、この中の記述で頻繁に様々なミュージシャンのインタビュー記事が出てくるので、その出典を調べているとその多くが「The Jazz Review」によるものだったのですね。引用されているバスター・スミス(Buster Smith)の発言やアンディー・カーク(Andy Kirk)に関する話、ベニー・モーテン(Bennie Moten)が亡くなった時の話など、その多くが「The Jazz Review」で発表されたものだったのは驚きました。

「The Jazz Review」は、世界初のジャズ専門誌で、ナット・ヘンホフ(Nat Hentoff)とマーティン・ウィリアムズ(Martin Williams)によって創刊された1958年から廃刊になる1961年までに22号まで出版されていたようです。出版されていた時期は、ジャズ草創期(1920年代)からは時間が経っていますが、この雑誌にはガンサー・シュラー(Gunther Schuller)による初期エリントン分析の記事であるとか、ビックス・バイダベック(Bix Beiderbecke)のレコードレビューの記事もあり、アーリージャズのファンにも楽しめるものになっています。

原典をあたろうとしなければ、おそらくは目にすることなかった情報だと思いますし、おかげで楽しみが増えています。原典と言う意味では、たまにアメリカの大学に保管されているインタビュー音源にたどり着くのですが、なんというか、これを消化するのは難易度が高く、流石にこれは諦めています。