前回に引き続き、ロバート・クラムのイラストカード「Early Jazz Greats」の紹介です。
箱を開けると中には36枚のカードが入っており、ジャズ草創期のミュージシャンのイラストがこれでもか！というくらい堪能できるのが良いですね。
チョイスされている人物も有名処は押さえつつ、中には渋い人選もあり、ロバート・クラム氏のジャズ愛好家振りが伝わってくるようで面白いのですよね。ここでは全員は紹介しませんが、例えば、下記のような感じのラインナップです。
Bennie Moten, Benny Goodman, Bix Beiderbecke, Coleman Hawkins, Duke Ellington, Earl Hines, Eddie Lang, Fats Waller, Fletcher Henderson, Frank Trumbauer, Freddy Keppard, Jabbo Smith, Jack Teagarden, Jelly Roll Morton, Jimmy Noone, Joe Venuti, Johnny Dodds, King Oliver, Louis Armstrong, Mary Lou Williams, Punch Miller, Sidney Bechet, Tiny Parham
描かれているイラストも見覚えのある構図が多く、これはあの写真が元ネタだろうな……と想起させられるのも楽しいですね。
ちなみに、カードの裏側には、その人物に関する説明文が書いてあるのですが、今回、このカードのことを思い出したのは、海外ジャズファンのコミュニティのタイニー・パーハム(Tiny Parham)に関する投稿で、「ロバート・クラムのカードセットで紹介された人物の中でアメリカ出身でないのはタイニー・パーハムだけ」という言及のされ方をしていたのを見かけたからなのですね。
改めて、本当かな？と思い、このカードを取り出してみた次第です。
ジョー・ヴェヌーティ(Joe Venuti)の説明文は、しっかりと彼自身の証言による出自が記載されており、思わず笑ってしまいました。
B: ABOARD SHIP TO U.S.A FROM ITALY, 1903
イタリアからアメリカに向かう船の中で生まれたという話が採用されていました。なるほど……これだとアメリカ出身ということになるのでしょうね。
ともかく、ジャズの主流ともいえる黒人ミュージシャンだけでなく、白人ミュージシャンもしっかりと取り上げられており、地域もニューオリンズ、シカゴ、ニューヨークだけでなく、一部カンザス・シティ要素もあるという非常にバランスの取れたチョイスなのが良いですね。
ジョー・ヴェヌーティ(Joe Venuti)のカードを見つけると、隣にはエディ・ラング(Eddie Lang)を並べてみたくなるのが草創期ジャズを愛好する者の嗜みなのですが、そうなるとビックス・バイダベック(Bix Beiderbecke)やフランキー・トランバウアー(Frankie Trumbauer)も並べたくなります。
カンザスシティ系と言えば、テキサス出身のコルネット奏者であるラマー・ライト(Lammar Wright)が36名に含まれていたのは驚きました。この人はカンザスシティで活躍していたベニー・モーテン(Binnie Moten)楽団で活躍した後、ニューヨークに移り住んでキャブ・キャロウェイ(Cab Calloway)楽団でも演奏していますね。ただ、ちょっとその意外なチョイスな気もして、カードを眺めるのが楽しくなりますね。
というわけで、「Early Jazz Greats」は、ジャズ草創期のファンにはおススメです。